春休みには予防接種を受ける時間を作りましょう

荻窪での寒さも少しずつ和らいできて、もうすぐ卒業のシーズンですね。

本日のお話しは春休みに受けておきたい予防接種についてです。

小学校入学前

小学校に入学する前に注射すべき予防接種は麻しん風しんワクチン、おたふくワクチン、3種混合ワクチン、ポリオワクチンの4つのワクチンです。麻しん風しんワクチン以外は任意予防接種になります。また、日本脳炎は7歳半までに3回定期予防接種を受ける必要があります。まだの方は同時接種もできますのでご検討ください。

  •  麻しん(はしか)風しんワクチン 定期予防接種

はしかと風しんは2018年流行のようにいつどこからウィルスに感染するかわからず、かかると合併症で脳炎や肺炎、死亡された方の報告もあります。1歳の時に1度予防接種を受けていますが2回接種しなければ免疫が十分ではありません。定期予防接種スケジュールは小学校に入るまでの1年です。

  •  おたふくワクチン 任意予防接種

おたふくは感染しても症状が現れず、知らないうちに人にうつすことがあります。学校のように集団生活をするところではあっという間に感染が広がるため注意が必要です。感染すると両頬の腫れや熱が出ます。しかしそれだけではなく時に合併症として脳炎や難聴、膵炎などを起こすことがあります。予防接種を受けておくとこれらの重症な合併症も起こりにくくなります。1回目の予防接種を杉並区で受けていない場合には小学校に入るまでの1年の予防接種の補助を受けられます。

    • 3種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風) 任意予防接種

    3種類のワクチンのうち百日咳が特に重要です。百日咳は咳が百日続き、息ができないくらい苦しくなる病気です。近年小中学生での感染が増えています。1歳までに予防接種を4回しばらくはしっかりと抗体があるのですが、入学前には抗体保持率が30%以下まで低下します。そのため入学後にかかってしまうお子さんがいらっしゃいます。海外では4歳以降に追加予防接種の機会があるのですが、日本では2歳以降に百日咳の予防接種の機会がありません(日本の定期予防接種は海外より遅れています)。そのため任意予防接種となりますが是非ワクチンを受けるようにしましょう。

    • ポリオワクチン 任意予防接種

    ポリオは感染すると脊髄の手足が動かなくなる麻痺が起こる病気です。治療できる手段はなく、一度かかると後遺症を残します。幸い日本でポリオの患者さんは近年いません。しかし海外の多くの地域でまだポリオの患者さんは発生しており、ポリオ流行地域の方の日本の入国者数は年間6万人ほどです。今後も外国人労働者雇用の法律改正や東京オリンピックで入国される方は益々増え、日本にも再度流行することが予想されます。世界では入学時に追加のポリオワクチンの定期接種をしていますが、日本では定期予防接種に組み込まれておりません。かかってからでは遅い病気ですのでこれを機会に接種を検討されてください。

    中学・高校・大学入学前

    やはり上述のワクチン(麻しん風しんワクチン、おたふくワクチン、3種混合ワクチン、ポリオワクチン)を受けていない場合には予防接種を受けるようにしましょう。この年代では他にも水痘(水ぼうそう)、おたふくは定期予防接種で1回しか注射していないため、母子手帳を確認し、水痘、おたふくワクチンの2回目を予防接種するようにしましょう。これらのワクチンは2回接種が必要です。その他に学生寮や運動部の合宿所がある場合には髄膜炎菌の予防接種も必要です。さらに女の子の場合にはHPVワクチンも16歳になる年度末(高校1年)までに予防接種を受けるようにしましょう。

    • 水痘ワクチン 任意予防接種

    水ぼうそうにかかったことがあれば予防接種は不要ですが、かかったことがなければ2回予防接種をする必要があります。水ぼうそうは学校などで一人が感染すると、空気感染であっという間にクラス中、学校中に感染が広まります。特に思春期以降では重症化しやすく肺炎や脳炎といった合併症を起こし入院することもあります。また水ぼうそうによる水ぶくれもひどくなることがあり、将来皮膚にあとを残すこともあるためしっかりと予防接種するようにしましょう。

    • 髄膜炎菌ワクチン 任意予防接種

    髄膜炎菌は数ある感染症の中でも死亡率の非常に高い恐ろしい病気です。限られた空間で集団生活する学生寮や学校の合宿所でこれまでにも集団感染が発生し、死亡された方もいらっしゃいます。髄膜炎菌は世界で30万人もの感染者数がおり、3万人が死亡しています。日本での発生例は年間2、30例程度ですが感染すると非常に危険な病気ですので海外留学、寮生活、合宿をする予定のある方は予防接種を受けることをお勧めします。

    • HPVワクチン 定期予防接種

    ヒトパピローマウィルス(HPV)は子宮頸がんをひきおこす発癌性のあるウィルスです。子宮頸がんは20〜30代で増加しております。HPVは性交渉をしたことがあればだれでも感染する可能性のあるウィルスですので、感染が起こる前に未然に防ぐ必要があります。多くの場合は特にがんを引き起さずに自然に治癒します。しかし時にウィルスが体内に残り、10年ほど潜伏した後に子宮頸がんを発症します。現在杉並区では積極的予防接種の推奨はされていません。しかし、これは予防接種をしない方が良い、ということを伝えているのではありません。予防接種を受けるよう積極的な宣伝を控えるという意味にすぎないのです。産婦人科学会は推奨しており、日本のHPVワクチンの予防接種率の低さは海外では恥ずべきこと、など警告されている状況です。副作用が問題になったことで有名なワクチンですが、日本や世界の研究で副作用が起こる確率よりも予防接種を受けることで子宮頸がんを予防できるメリットの方が大きいと立証されているワクチンです。大事なお子さんが子宮頸がんになる前にどうか予防接種を受けるようお願いします。

     

    ワクチンは感染症にかかるのを予防できる最大の防御法です。感染してしまってからでは治療法のない感染症も多くあります。荻窪にお住いのみなさま、取り返しのつかない状況になってから後悔するよりも今からしっかりと予防に取り組みましょう。どの予防接種を打つべきかわからない、ご不安などありましたら中島医院にどうぞご連絡ください。